おおいたペインクリニックの専門医による「痛みの相談室」|手・指の痛みの原因と当院専門医のアドバイス

手をついたりしていないのに手首が痛いです。

手首は小さな骨や腱、神経が複雑に絡み合う部位です。外傷がない場合の慢性的な痛みには、主に以下の病態が考えられます。
- 腱鞘炎(けんしょうえん)の炎症
- 原因: パソコン作業やスマートフォンの操作、あるいは手首をよく使う仕事(調理、育児など)により、特定の腱が使いすぎで炎症を起こしています。
※特に親指側が痛む場合は、ドケルバン病(狭窄性腱鞘炎)が疑われます。 - 病態: 腱を包む腱鞘(トンネル)が腫れて腱の滑りが悪くなることで、手首を動かしたり、物を掴んだりする際にズキッとした痛みを感じます。安静にしていても、炎症が強い場合はズキズキとした痛みが続くことがあります。
- 原因: パソコン作業やスマートフォンの操作、あるいは手首をよく使う仕事(調理、育児など)により、特定の腱が使いすぎで炎症を起こしています。
- 神経の圧迫(手根管症候群)
- 原因: 手首の内部にある「手根管」というトンネル内で、正中神経という神経が圧迫される病気です。
- 病態: 手首だけでなく、親指から薬指の半分にかけてのしびれや痛みが生じます。特に夜間や明け方に痛みが強くなり、手を振ると楽になるのが特徴的です。
- 関節の炎症や変形
- 原因: 手首の小さな骨(手根骨)の関節に炎症が起きている場合や、関節炎が進行している場合です。
治療によってどう良くなるか
手首の痛みは、安静にすることが基本ですが、痛みを我慢して使い続けると、炎症が慢性化して治りにくくなります。
- 局所麻酔薬とステロイドの注射(腱鞘内注射): 腱鞘炎(ドケルバン病など)の場合、痛みの発生源である腱鞘の炎症部位に正確に薬液を注入し、炎症を速やかに鎮めます。これにより、腱の滑りが改善し、痛みを劇的に和らげることが期待できます。
- 手根管ブロック注射: 手根管症候群が原因の場合、圧迫されている正中神経の周囲に注射を行い、神経の炎症を抑え、しびれや痛みを緩和します。
- 装具やサポーターによる安静: 日常生活で手首を使わざるを得ない場合、炎症が治まるまで装具やサポーターを適切に使用し、手首への負担を最小限に抑える指導も行います。

モノをつかむと手首や親指の付け根が痛みます。

親指の付け根から手首にかけての痛みは、医学的には「ドケルバン病(狭窄性腱鞘炎)」と呼ばれることが多いです。
- ドケルバン病(狭窄性腱鞘炎)とは?
- 原因: 親指を動かす2本の腱が、手首の親指側にある腱鞘(トンネル)の中を滑るときに、摩擦が起きて炎症が生じます。
- スマートフォンの操作、PCのマウス操作、赤ちゃんを抱っこする(特に手首を小指側に曲げた状態で親指を酷使する動作)など、親指を繰り返し使う動作が原因となります。
- 病態: 腱鞘が腫れたり厚くなったりすることで、トンネルが狭くなり、腱がスムーズに動けなくなります。その結果、モノをつかんだり、絞ったり、親指を開いたりする際に、電気が走るような鋭い痛みが走ります。
- 神経の関与(まれに)
手首の別の部位の神経(橈骨神経浅枝など)が圧迫されることによる痛みも考えられますが、「モノをつかむ」という動作でピンポイントに痛む場合は、やはり腱鞘炎が主原因である可能性が高いです。
治療によってどう良くなるか
ドケルバン病は、痛みを我慢して使い続けると、腱鞘の炎症が慢性化して治療が長引きます。早期に炎症を鎮め、腱鞘の通りを良くすることが重要です。
一般的には、安静や湿布、テーピングが用いられますが、痛みが強い場合は専門治療が有効です。
- 腱鞘内ステロイド注射: 当院では、ドケルバン病の痛みの発生源(炎症を起こしている腱鞘の中)に、局所麻酔薬と少量のステロイドを正確に注入します。この注射は、腱鞘の炎症を非常に効率よく鎮め、多くの場合、数日で劇的に痛みが改善し、モノをつかめるようになることが期待できます。
- 装具やサポーターによる安静: 注射で炎症が治まった後、腱鞘への負担を最小限に抑えるための**装具(サムスパイカースプリントなど)**の適切な使用を指導します。

指が曲がらない・伸びない

指の曲げ伸ばしが困難になる症状の代表例は、「ばね指(弾発指:だんぱつゆび)」です。
- ばね指(弾発指)とは?
- 原因: 指の曲げ伸ばしをする「屈筋腱」が、その腱を覆うトンネル(腱鞘)の入り口付近で炎症を起こし、腱鞘が分厚く硬くなることで起こります。
特に指の付け根(手のひら側)に負担がかかる作業(キーボード操作、工具の使用、育児など)の繰り返しが原因となります。 - 病態: 炎症により腱がスムーズに腱鞘の中を通過できなくなり、指を曲げ伸ばす際に「引っかかり」が生じます。
この引っかかりを無理に動かそうとすると、「カクン」または「パチン」と弾けるように指が動くため、「ばね指」と呼ばれます。
症状が悪化すると、朝起きたときなどに指が曲がったまま(または伸びたまま)固まってしまい、自力で動かせなくなることもあります。
炎症が強い場合は、指の付け根の関節(MP関節付近)を押すと強い痛みを感じます。
- 原因: 指の曲げ伸ばしをする「屈筋腱」が、その腱を覆うトンネル(腱鞘)の入り口付近で炎症を起こし、腱鞘が分厚く硬くなることで起こります。
- 他の原因(稀に)
- 関節リウマチなどによる関節の炎症や変形が原因となることもありますが、指の付け根の引っかかりが主症状であれば、ばね指が最も疑われます。
治療によってどう良くなるか
ばね指は、放置すると指の関節に負担がかかり続け、変形や拘縮(動きが硬くなること)につながるリスクがあります。早期に炎症を抑え、腱の滑りを改善することが重要です。
一般的には、安静やテーピング、湿布などが用いられますが、症状が進行している場合は専門治療が必要です。
- 腱鞘内ステロイド注射: 当院では、ばね指の原因となっている腱鞘の最も狭い部分に、局所麻酔薬と少量のステロイドを正確に注入します。この注射は、腱鞘の炎症と腫れを効率よく鎮め、腱の滑りを改善することで、引っかかりや痛みを劇的に解消することが期待できます。
- 安静の確保: 注射後、炎症が再燃しないように、指を使いすぎないよう指導いたします。スーパーライザー治療:特定の波長帯の近赤外線を照射して治療する光線治療です。針の穿刺は行わず、手指の疼痛部位や、首の付け根にある自律神経部位に照射します。繰り返しの治療が必要です。

指にうまく力が入らない。

指の筋力低下や力の入れにくさの主な原因は、指そのものの問題よりも、指を動かすための信号を送る「神経」や、力を伝える「腱」のトラブルです。。
- 神経の圧迫(最も注意が必要)
- 原因: 首から腕、手首にかけて走行している神経が、どこかで強く圧迫されている状態です。神経が圧迫されると、その神経が支配する筋肉に十分な指令が届かなくなり、筋力低下として現れます。
- 頸椎の問題(ヘルニア・頸椎症): 首の骨から出る神経の根元が圧迫され、手の特定の部分に麻痺や筋力低下を起こします。指全体に力が入らないと感じることもあります。
- 手根管症候群: 手首で正中神経が圧迫され、親指から薬指の半分にかけての筋肉(特に親指の付け根のふくらみ)が萎縮し、ボタンを留める、細かいモノをつまむといった動作が困難になります。
- 腱の損傷や炎症
- 原因: 指を動かす腱(けん)が、炎症や断裂により力を伝える機能を果たせなくなっている状態です。
- 腱板の断裂(肩): 稀ですが、肩の腱板損傷が進行し、神経が麻痺することで、手の動きに影響が出ることがあります。
- 腱鞘炎の進行: 腱鞘炎が悪化し、腱の動きが非常に制限されると、指を伸ばしたり曲げたりする際に力が入りにくくなります。
治療によってどう良くなるか
筋力低下は、神経のダメージが進行しているサインである可能性があり、早期に神経への圧迫を解除し、機能を回復させることが極めて重要です。
放置すると、筋肉の萎縮が進行し、回復が困難になるリスクがあります。整形外科医師や神経内科医師の診察や、電気生理学的検査やMRI画像検査などによる正確な診断が必要となることもあります。患者本人と話して適切に今後の方針を決定します。
- 頸部神経ブロック注射による治療:頸椎疾患が疑われる場合: 神経根ブロック注射により、首の圧迫部位の神経の炎症を速やかに鎮め、神経への血流を改善し、筋力回復を促します。
- 手根管症候群が疑われる場合: 手根管ブロック注射により、手首の神経の炎症と圧迫を緩和し、指への力の入りやすさを回復させます。
- 電気生理学的検査と正確な診断: 当院では、指に力が入らない原因が首、肘、または手首のどの場所にあるのかを特定するため、筋電図検査などの専門的な検査を行い、最適な治療計画を立てます。
