おおいたペインクリニックの専門医による「痛みの相談室」|胸・背中の痛みの原因と当院専門医のアドバイス

背伸びで頻繁につりそうになります。病院で診てもらうべきでしょうか。

頻度が高い場合や、他の症状(しびれなど)を伴う場合は、一度専門的に診察を受けることをお勧めします。
こむら返り(足の痙攣)の主な原因は、一時的なものから、治療が必要な病気が隠れているものまで様々です。
1. 一時的な原因(水分・ミネラル)
水分・ミネラル不足: 最も一般的な原因です。発汗による脱水や、体内のミネラル(特にマグネシウム、カルシウム、カリウム)バランスの乱れにより、筋肉の収縮をコントロールする機能が不安定になります。
血行不良: 疲労や冷えにより足の血行が悪くなると、筋肉内に老廃物が溜まり、神経が過敏になって痙攣しやすくなります。
2. 治療が必要な原因(神経・血管)
頻繁に起こる場合や、安静時にも起こる場合は、背骨(腰)や血管の病気が原因となっている可能性があります。
- 神経の圧迫(腰椎疾患): 腰の神経の根元(神経根)が、椎間板ヘルニアや脊柱管狭窄症などで圧迫されていると、神経が過敏になり、足の筋肉に異常な信号が送られやすくなり、こむら返りを起こしやすくなります。
- 閉塞性動脈硬化症(PAD): 足の動脈硬化により血流が悪くなっていると、筋肉に酸素が十分供給されず、こむら返りや痛みが起こりやすくなります。
治療によってどう良くなるか
「単なる体質」や「疲れ」と放置せず、専門的に原因を特定することが重要です。
- 内服薬による治療: 当院では、まずミネラルバランスを整える薬や、筋肉の異常な興奮を鎮める薬(筋弛緩薬など)、血流を改善する薬の処方から始め、症状の緩和を図ります。
- 神経ブロック注射: 腰の神経圧迫が原因と診断された場合、硬膜外ブロック注射や神経根ブロック注射で、神経の炎症と過敏な状態を鎮めます。これにより、足への異常な信号の伝達を遮断し、こむら返りの根本的な原因を取り除くことを目指します。

胸や脇など肋骨の周りが痛いです。

内臓の問題がないと仮定した場合、胸や脇の痛みの主な原因は、肋骨に沿って走る神経や筋肉の炎症です。
肋間神経痛(ろっかんしんけいつう):
- 原因: 肋骨と肋骨の間を走る「肋間神経」が、何らかの理由で刺激されたり炎症を起こしたりしている状態です。特に、過去の帯状疱疹(ヘルペスウイルス)が治癒した後も神経の痛みが残るケースや、体幹を強くひねる動作などで神経が圧迫されるケースがあります。
- 病態: 痛む場所は限られており、ピリピリ、チクチク、あるいは電気が走るような鋭い痛みが、肋骨に沿って帯状に現れるのが特徴です。深呼吸や咳、体をひねる動作で痛みが強くなります。
肋骨と軟骨の炎症(肋軟骨炎、肋骨骨折):
- 原因: 肋骨や、肋骨と胸の骨(胸骨)をつなぐ軟骨の部分に炎症が起きている場合(肋軟骨炎)、または咳や外傷で**気づかないうちに肋骨に小さなヒビ(骨折)**が入っている場合があります。
- 病態: 特定の場所を指で押すと激しい痛みがあり、深呼吸や体勢を変えるたびにズキッと痛みが走ります。
筋・筋膜性疼痛(トリガーポイント):
- 原因: 背中や肩の筋肉が極度に緊張することで、その痛み(関連痛)が胸や脇に放散しているケースです。
治療によってどう良くなるか
胸や脇の痛みは、痛みのプロフェッショナルであるペインクリニックが最も得意とする分野の一つです。
- 肋間神経ブロック注射: 痛みの発生源である肋間神経に、局所麻酔薬や抗炎症薬をピンポイントで注入します。これにより、神経の過敏な興奮と炎症を速やかに鎮め、呼吸や咳に伴う激しい痛みを和らげることができます。特に肋間神経痛には極めて有効です。
- 胸部硬膜外ブロックや胸部神経根ブロック:痛みを発する部位のより根本で痛み刺激の伝達を遮断します。肋間神経ブロックよりも効果が強いとされています。
- 内服薬による治療: 神経痛が強い場合は、神経の異常な興奮を落ち着かせるための神経障害性疼痛治療薬などを併用し、痛みの慢性化を防ぎます。

呼吸や咳をすると痛む原因は何が考えられるのでしょうか?

呼吸や咳といった、日常的な生理現象に伴って痛みが強まるのは非常に苦痛ですね。これは、痛みが肋骨や胸郭(きょうかく)といった、呼吸運動に関わる部位に起因している可能性が高いことを示しています。
呼吸や咳で痛む場合の主な原因は、主に以下の3つが考えられます。
- 肋骨周囲の神経の炎症(肋間神経痛)
- 原因: 肋骨と肋骨の間を走る肋間神経が刺激を受け、炎症を起こしている状態です。
- 病態: 咳や深呼吸をすると、胸郭が大きく広がり、炎症を起こした肋間神経が引っ張られたり圧迫されたりするため、鋭い痛みが走ります。特に帯状疱疹の後遺症として起こる場合、この痛みは非常に頑固です。
- 肋骨や軟骨の損傷・炎症
- 原因: 強い咳のしすぎや、気づかないうちに受けた衝撃などで、肋骨に小さなヒビ(疲労骨折)が入っていたり、肋骨と胸骨をつなぐ軟骨(肋軟骨)に炎症が生じていたりする場合があります。
- 病態: 呼吸や咳、笑うなどの動作で、骨や軟骨が動かされることで激しい痛みが発生します。安静時にも痛むことが多く、特定の場所を指で押すと特に痛みます。
- 胸郭を動かす筋肉の過度な緊張
- 原因: 脇の下や背中にある、呼吸を補助する筋肉(呼吸補助筋)が、疲労やストレス、不良姿勢などにより過度に緊張している場合です。
- 病態: 深呼吸をするときにこれらの筋肉が強く収縮・伸展しようとすることで、筋肉内のトリガーポイントが刺激され、痛みが起こります。
治療によってどう良くなるか
呼吸に伴う痛みは、炎症を速やかに鎮め、痛みの記憶をリセットすることが最も重要です。放置すると、痛みを避けるために呼吸が浅くなり、自律神経の不調にもつながりかねません。
- 肋間神経ブロック注射: 肋骨の痛みに対しては、これが最も直接的で効果の高い治療法です。痛みの原因となっている神経の炎症をピンポイントで鎮め、呼吸や咳に伴う痛みを大幅に和らげます。
- 投薬治療と安静: 肋骨の骨折や強い炎症が疑われる場合は、消炎鎮痛薬や神経の興奮を抑える薬を併用し、痛みが治まるまで安静を保ちます。
ただし、発熱や息苦しさ、激しい咳を伴う場合は、肺炎や気胸など内科的・外科的な病気が隠れている可能性もあるため、そちらの専門医の診察を優先してください。
内臓疾患でないと確認された上で痛みが続く場合は、肋間神経痛のプロである当院へお越しください。痛みの悪循環を断ち切り、楽に呼吸ができる日常を取り戻すお手伝いをいたします。

寝ているときに背中が痛いです。

この痛みは、単なる筋肉疲労ではなく、炎症や骨の構造的な問題が関わっている可能性が高く、専門的な検査と治療が必要です。
寝ているとき、つまり安静時にも痛みが続く、あるいは特定の姿勢で悪化する背中の痛みには、主に以下の原因が考えられます。
- 椎間関節の炎症(胸椎・腰椎)
- 原因: 背骨(胸椎や腰椎)の小さな関節(椎間関節)に炎症が生じている状態です。
- 病態: 睡眠中は長時間同じ姿勢でいるため、炎症部位への圧迫や血流の滞りが生じやすく、炎症物質が溜まって痛みが強まります(夜間痛)。寝返りを打つなど、わずかに体勢を変えるだけでも鋭い痛みが走ることがあります。
- 筋肉の深部のトリガーポイントと血流不良
- 原因: 長時間のデスクワークや猫背などにより、背中の深部にある筋肉(多裂筋など)が慢性の過緊張を起こし、強いトリガーポイントが形成されています。
- 病態: 睡眠中は筋肉の活動が低下し、血流が悪化するため、トリガーポイント周辺に痛み物質が溜まり、鈍い重さや痛みが発現・増強します。
- 内臓からの関連痛(特に注意が必要)
- 原因: まれに、胃や十二指腸などの消化器系の疾患や、腎臓・膵臓などの病気が、**背中の特定の位置に痛み(関連痛)**として現れることがあります。
- 病態: この痛みは、姿勢に関係なく持続することが特徴です。
治療によってどう良くなるか
夜間の痛みは、生活の質を大きく損なうため、速やかに炎症を鎮め、痛みから解放されることが最優先です。
- 椎間関節ブロック注射: 画像診断で特定した炎症を起こしている椎間関節に、正確に薬液を注入します。これにより、夜間痛の原因となっている炎症を鎮め、質の高い睡眠を取り戻すことができます。
- 胸部硬膜外ブロック注射: 背骨の中を通る神経全体の炎症を抑えることで、広範囲の痛みや、慢性的な筋肉の過緊張を緩和します。
- 診断と投薬治療: 痛みの原因が内臓疾患ではないかを確認した上で、神経の炎症や筋肉の緊張を緩和する内服薬を処方し、治療をサポートします。
