おおいたペインクリニックの専門医による「痛みの相談室」|帯状疱疹の原因と当院専門医のアドバイス

数ヶ月前に顔の左側に湿疹ができて、その後もヒリヒリとした痛みが続いています。皮膚は治ってるのに、少し触れるだけでもすごく痛いんです。これって何か治る方法があるんでしょうか?

あなたが訴えられている症状は、ほぼ確実に「帯状疱疹後神経痛(たいじょうほうしんごしんけいつう)」と呼ばれるものです。
帯状疱疹後神経痛のメカニズム
- 原因: 数ヶ月前にできた湿疹は、おそらく帯状疱疹(水痘・帯状疱疹ウイルスが原因)であったと考えられます。このウイルスは、発症時に顔の神経を激しく破壊・損傷します。
- 病態: 皮膚の湿疹(炎症)が治った後も、神経そのものの損傷が残ってしまうため、神経が過敏な状態になっています。この過敏になった神経が、通常は痛みと感じないはずの軽い刺激(衣服が触れる、風が当たるなど)を**「激しい痛み」**として脳に伝えてしまいます。
- 特徴: 痛む部位が限られ、ヒリヒリ、ジンジン、焼けるようなといった表現をされることが多いです。顔の場合、三叉神経の枝が損傷されていることが多いです。
治療によってどう良くなるか
帯状疱疹後神経痛は、通常の痛み止めでは効果が薄く、専門的な神経の治療が必要です。発症から時間が経つほど治りにくくなる傾向があるため、早期に専門治療を開始することが非常に重要です。
- 神経ブロック注射: 当院での治療の中心となります。痛みを感じている顔の神経(三叉神経の枝)の周囲に、局所麻酔薬や抗炎症薬を注入し、損傷した神経の異常な興奮を鎮めます。これにより、ヒリヒリとした持続的な痛みや、触れたときの激痛を効率よく和らげ、神経の回復を促します。
- 内服薬による治療: 神経の過敏性を抑えるための神経障害性疼痛治療薬(三環系抗うつ薬や抗てんかん薬など)を、症状に合わせて慎重に処方します。この薬は、神経そのものの興奮を抑え、ブロック注射の効果を補完します。
「皮膚は治っているのに痛みが続く」のは、神経が悲鳴を上げている証拠です。専門的な治療により、この長引くつらい痛みをコントロールし、以前の快適な生活を取り戻すことが可能です。放置せず、痛みのプロフェッショナルである私たちにぜひご相談ください。

帯状疱疹にかかりましたが、皮疹が治れば痛みも自然に治りますか?

残念ながら帯状疱疹の痛みは、皮疹が治っても残ってしまうリスクがあります。これは、ウイルスが皮膚の表面だけでなく、皮膚の感覚を司る神経そのものを破壊するためです。
- 急性期の神経損傷: ウイルスは脊髄近くの神経節に潜んでおり、発症時に神経線維を伝って皮膚に出てくる過程で、神経を激しく傷つけます。
- 痛みの長期化のリスク: 特に高齢の方や、急性期の痛みが強かった方は、皮疹が治った後も神経の傷が治りきらず、異常な信号を出し続ける状態(帯状疱疹後神経痛)に移行しやすいことが分かっています。
- 早期治療の重要性: ウイルスの増殖を抑える抗ウイルス薬と同時に、早期に痛み自体を治療することが、この神経痛への移行を防ぐ鍵となります。
治療によってどう良くなるか
当院では、帯状疱疹の発症直後から治療を開始し、「帯状疱疹後神経痛」へ移行させないことを目標とします。
- 神経ブロック注射: 発症直後の急性期に、痛む部位に対応する神経にブロック注射を行うことで、神経の炎症を最小限に抑え、神経の破壊を防ぎます。これが、痛みを長引かせないための最も重要な治療です。
- 神経の興奮を抑える内服薬: 初期段階から、神経の過敏な興奮を抑える専門薬を併用することで、ウイルスによる損傷からの回復を促し、痛みの慢性化を防ぎます。

帯状疱疹後神経痛で、服が触れるだけでも飛び上がるほど痛いです。薬を飲んでいますが、効果がありません。どうしたらいいでしょうか?

「服が触れるだけでも痛い」という症状は、アロディニア(異痛症)と呼ばれ、帯状疱疹後神経痛の最もつらい特徴の一つです。これは、末梢神経だけでなく、脳内で痛みの信号処理が異常になっている状態です。
- 神経の過敏化: 損傷した神経が過敏になり、通常は痛みではない弱い刺激(触れる、なでるなど)を「痛み」として誤って脳に伝えます。
- 中枢神経の誤認識: 長期間痛みが続くと、脳の痛みを司る部位も変化し、神経の損傷が治っても**痛みが記憶として残り、**わずかな刺激に過剰に反応し続けます。
治療によってどう良くなるか
一般的な痛み止めが効かないのは、痛みの原因が「炎症」ではなく「神経の異常信号」であるためです。専門的なアプローチで、この異常信号をリセットします。
- パルス高周波法(PRP): 神経ブロック注射よりもさらに高度な治療で、痛みの原因となっている神経にラジオ波のパルス電流を流し、神経の異常な興奮伝達を穏やかに修復します。皮膚を切らずに行える、当院の専門治療です。
- 各種神経ブロックと専門薬の調整: 神経の炎症を鎮めるブロック注射に加え、神経細胞自体に働きかける専門薬(抗てんかん薬など)を、患者様の痛みの性質に合わせて細かく調整します。
